仕事柄、HP制作、システム開発でノーコードやローコードツールを使用する場面があり、今回はその肌感を書いていけたらと思う。
意外とコーディングの知識が必要
ノーコードにもローコードにもいくつかの誤解があるように感じた。そのうちの一つが、プログラミングの知識が意外と必要だということ。
ノーコードツールを使用したHP制作では、確かに簡単なHPを作成することは実感できた。しかし、GUI操作だけで対応できないことは勿論、少しテンプレートと異なるデザインをしたいとなったら、HTMLとCSS的に考えて実装しなければいけない。
HTML弱者である僕も初めて知ったのだが、buttonタグにaタグを適用することはできないらしい。非エンジニアの人から見れば、aタグもボタンもクリックできるんだから同じだろうと思うだろうが、ツール的にはできないものは出来ないらしい。
まあ、HTMLを生成するんだからHTMLに忠実なのは仕方がないか。
ローコードだって、for文の書き方や変数の考え方、データの型についてある程度の知識が必要だし、DB設計だってできないときちんと使えるシステムを作るのは難しい。こういうところが意外とエンジニア的な素養が必要であると感じた点である。
工数削減
とはいえ、開発や制作の工数の削減は顕著だ。フロントエンド難民の僕でも数日で人に見せられるものを作れたし、シンプルであればシステムもRPAツールの開発もあっという間である。
エンジニアはコーディングしたいエゴと魔法のようなツールという言葉に惑わされて、「あれ?こんなこともできない。」なんて文句を言ってしまうが、お客さんからしたら、エンジニアの戸惑いは関係なく、安いだけでメリットだろう。
セキュリティの管理も楽
自分でサーバーを管理しないのであれば、セキュリティを管理する必要も少なくなる。多くの場合ツールを提供している会社の管理範囲にセキュリティが含まれるから、そういうところは考えなくてもいい。つまるところ、保守コストも下がる。
プラットフォーム特有の技術的な問題
工数を削減できる一方で、ノーコード・ローコードは、やはり特定のプラットフォームで動くツールであることは間違いない。
つまり、ローコードの数少ないコーディング部分が通常の言語とは仕様が異なるとか、一般的なデータベースではないために、結合がしにくいなどは感じた問題点である。
また、機能的な制約もあり、CMSで動画を使えないとか、ネットワークの制約を解決できないということはあり得る。
ノーコード・ローコード技術との向き合い方
最後にノーコード・ローコードとの向き合い方を考えて終わりたいと思う。
クライアントワークの場合、予算と仕様の問題に限る。予算は、開発工数がどの程度抑えられるのか、運用費用はどの程度かかるのか。そのトレードオフがプラスに転じるのならノーコード・ローコードの使用は大いに視野に入れていいだろう。
次に仕様を達成できるか。ネットワーク要件や他システムとの連携などの機能が実現できるのかが鍵である。要件定義の中で必要機能、システムの将来展望も引き出した要件を洗い出し、それらをプラットフォーム上で構築することができるのかを調査する。その調査結果を元にツールの使用を検討することは必須である。何でもかんでもできるわけではないということは頭に入れておく必要がある。
また、長期的に見た時に二つの懸念点があると思っている。
一つ目は保守面の問題である。プラットフォームの状況が運用保守に関わってくるという面である。極端ではあるが、プラットフォームの運営会社が破綻してサービスが止まってしまったら、システムもWEBページも停止してしまう。そこまで極端でなくても、アップデートが起きたときに何もしてなくても動作が変わってしまうみたいなことも考えられる。
まあ、レンタルサーバーでもクラウドでも会社が潰れる可能性なんてゼロじゃないんだから、ノーコード・ローコードに限った話ではないし、アップデートだってなるべく動作に影響のないように開発しているだろうから、考える必要はないだろとかあるかもしれない。
どちらにせよ、サーバーやプラットフォームを自分たちで管理している訳ではないので、外的要因に左右される部分は大きくなる。
二つ目はプログラマが育たない問題である。
ノーコード・ローコードばかりでスクラッチで開発するプログラマが育たない問題みたいなものは考えられる。また、プラットフォームを利用している以上、ミドルウェア以下に対する知識や経験が付かないのも問題としてある。アウトプットが出てる以上、ビジネス目線価格が安く、プラスしかないと思うかもしれないけど、メンバーの技術的な土台を築くことができないことは、長期的に見たらネガティブに働くことは全然あり得る話だと思っている。
これらの問題とどう向き合っていくかが、ノーコード・ローコード問題のカギになるかと考えている。
今回はここらへんにしたいと思う。